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恋、コイ

17s.jpg

 毛先をくるんと巻いたポニーテール。
 ほつれる後れ毛が細くて白い後ろ首にかかっていて。
 6月というのにこの暑さで、肘まで折り曲げた長袖ワイシャツからは色白な腕が見ている。
 そんな彼女の姿を、斜め後ろの席から眺めていた。

 あたしは彼女を眺めているあいつを、いつも真後ろの席から眺めているのだ。


 溜息が聞こえてきそう。
 そんな感じで俯いたあいつを見て、わたしは窓の外の誰にも使われていない校庭に目をそらした。
 


 鞄に突っ伏してる真田の後頭部を日誌の表紙で軽く叩いてやった。
 なんとも軽い音がする。
 「・・・っんだよ」
 「日誌。あんた全然書いてないでしょ、大体は書いといたけど感想欄のとこ書いて」
 「日直とかマジめんどくさいわ」
 「ってあんた日直の掃除もなんもやってないでしょ!」
日誌で叩く構えをしたあたしを見て、真田は「書きゃあいんだろ」と手のひらを振りながら日誌を受け取った。
 「そういえば、部活は?今日はないの?」
 「だって雨降りそうじゃん。たりぃからサボる」
 「そんなテキトーでテニス部はいいわけ?」
 「いいんだよ。俺どうせ補欠部員だし。テニスラケットでバドミントンしてるくらいだから」
 そう言いながらボールペンで、斜めに「異常なし」と乱暴な字で書き殴った。日直の感想に異常なしってなんだよ。

 本当は、異常ありまくりなくせに。
 
 小さく溜息をついて、何気ない声に聞こえるようにしながら聞いた。
 「そういえば、前川さんって5組の佐々木君と付き合い始めたらしいね」
 ペンケースをサブバッグに入れようとしていた手が一瞬止まった。
 「・・・だから、なんだよ」
 「だからなんだよって。あんた前にあたしに恋愛相談してきてたじゃん」
 「だからってなんで俺の好きな相手が前川だっていうんだよ」

 あたしはあんたをいつも見てるから。

 心ではそう呟いたのに、口からは「真後ろにいりゃあ、嫌でもわかるよ」って。素直じゃない言葉が飛び出た。
 真田は一瞬苦い顔になって、頭をガシガシ掻いたと思ったら「あーあ!」と声に出して溜息をついた。
 イスにどさっと座ったのを見て、あたしもなんとなく真田の隣の席を借りて座った。
 「告白とかは?どうしようとか言ってたけど結局しなかったの?」
 「・・・なんつーかさ。言って振られるのが怖いとかそうゆんじゃなくて・・・」
 言葉にするのが難しそうに真田は眉をひそめた。あたしは彼の顔を見ながら、辛抱強くそのあとの言葉を待った。
 自分から真田に聞き始めたことなのに。自分から前川さんの話をし出したのに。
 真田のキモチを聞きたいのに、それと同時に彼の想いを知ることがなんだか嫌だった。

 真田とは中学から一緒だった。中学生のときは1年しか同じクラスになったことがなくて特別仲良かったわけじゃなかったけど、高校も一緒になっていわゆる「同じ中学出身者」ってこともあって話すようになった。
 しかも高校は3年間同じクラス。誰とも親しくなる真田の気さくな性格もあって、ふざけ合ってバカ言い合ったりとか放課後とか掃除の時間にわけもなく話すその数分間があたしの中ですごく大切なものになった。
 いつも面倒くさそうにしてるけど、根は真面目な性格で。口調は軽くてちょっと乱暴だけど、本当は優しくて。
 いつから好きになってたんだろ。でも「ああ、あたし真田のことが好きなんだ」って自分の気持ちに気づいたら、急にいつもの会話にドギマギしたりして。かといってわざと乱暴な言葉使ってしゃべっちゃったりとか。素直にいかない自分が嫌いだった。
 けどいつからだっけ、真田が前川さんのことが好きなんだって気づいたのは。もしかしたら、あたしが勝手に察したのかもしれない。真田は表裏のない性格だし、なんとなくでわかっちゃったのかもしれない。
 
 「・・・告るとかその前に、俺って前川さんに好かれるようなこととか会話とか全然してねぇなーって思って」
 「どうして?いいじゃん、付き合ってからお互い知ってくみたいなのもアリだと思うけど」
本当にそうなったら嫌なくせに。なに正反対なこと言ってんだ、自分。
 「や、でも、別に話したこともない奴から急に『付き合ってください』的なこというのもあれじゃね!?つーか急に言われたらどうよ、絶対『は?なんで?』みたいにならねえ!?」
 「さあ・・・」
 「あたしは真田に言われたら嬉しい。」そんな言葉を言えるはずもなくて。最後には自分の気持ちと正反対のことを言ってしまう。
 「でも好きって言われてあんま嫌な思いはしないんじゃない?すっごい嫌いな相手以外なら。だからほら、あんましゃべったことないだったら逆に言うとそんなに嫌われてもないはずだろうしさ?」
 「なに、お前ってけっこう適当なんだな」
 「適当って・・・そんなこと・・・ないけど」
ズキッ。心にヒビが入る音がした。
 今のあたしの話じゃそう思われてもしかたない。しかたないけど・・・やっぱり真田にはそんなこと言われたくない。恋愛に適当な奴って思われたくはなかった。
 これじゃあ真田のことが好きなのか、本当に前川さんへの恋を応援してるのかなんなのかわかんない。
 これ以上しゃべると今度は嫌なことを言いそうで、あたしは「まぁ、いいや。帰ろう!」って気にしてないみたいに言って立ち上がった。
 真田はあたしを見て、「けど」と続けた。
 「こんなことしゃべんのって吉崎だけかも。友達にすら言ったことねーし」
 振り向いたらニカッって笑顔を向けられた。
 「・・・なにそれ」
 「吉崎相手だとしゃべりやすいっつうか、なんつーか・・・考えずにそのまま話してる気ぃする。ったく、なんで中学の時からそうなんなかったんだろうな」
 それって要するにあたしが恋愛対象でもなんでもないからなんでしょ?
 そう思ったけど、でも唯一心許してもらってるようで。
 嬉しいなんて馬鹿みたいだ。
 「ってことでさ!お前チャリ通だろ?帰んだったらあそこのコンビニまで乗っけてって」
 「いいよ。ただし、運賃はアイス1本ね」

 しくしくする心臓に、いつものように蓋を閉めた。
 真田の言葉とか、そういうものに傷ついたり嬉しく思ったりする自分に気づかなかったふりをする。

 開いていた教室の窓を閉めた。


 どんよりした色の空は、今にも泣きそうだった。



 続く

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| 恋、コイ | 04:04 | comments:6 | TOP↑

COMMENT

リアルです。切ないです。
吉崎も真田もがんばれ!

| いき♂ | 2011/06/04 10:34 | URL | ≫ EDIT

あうう、切ないです。
ええい、この鈍感!と、真田くんに言ってやりたい!
続き、楽しみにしてます。

| 水聖 | 2011/06/05 01:35 | URL | ≫ EDIT

>いき♂さん
早速のコメントありがとうございます!

いつもキュン系を目指した恋愛小説ばっかりなんで
ちょっと片思いの切なさ出してみましたw
2話で・・・このふたりをどうにか収拾つけたいです。

| 神楽崎@管理人 | 2011/06/05 02:40 | URL | ≫ EDIT

>水聖さん
自分が片思いしてるときって案外
自分が誰かに好かれてることに気づかないことって多いんじゃないかなぁ~とか。
想いの矢印の方向がどっちも一方通行、という小説書いてみました。

きっと次で完結しますw(完結・・・できるようにどうにかしたい)

| 神楽崎@管理人 | 2011/06/05 02:43 | URL | ≫ EDIT

お久しぶりです_(._.)_
ちょっと時間が取れなかったので、短編でもと思って読んでみたら……
すごい惹きつけられました^^
学校の風景と二人の情景がふわりと浮かんで、まるでドラマを見ているような感じ^^
神楽崎さんの文体も優しくて、切ないストーリーが心に響いてきました。
それでは、また遊びに来ますね^^

| 月黎風 | 2011/07/16 02:34 | URL | ≫ EDIT

>月黎風さん
お久しぶりです!
そしてコメントありがとうございました(*´ω`*)

いつもラストハッピーエンドで両想いな感じばっかりなので
片思いの切ない小説が書きたい!
と急遽思って勢いで書いてしまいましたww
短編だと一部の会話やシーンに限定されてしまうので、もっといっぱい書きたいなぁ~・・・
と思っていたら読み切りがまさかの「続」になってしまいました^^;

もう少しで…2話目もUPできたらと思っています。
是非またお時間あるときに覗きにきてください♪

| 神楽崎@管理人 | 2011/07/17 01:51 | URL | ≫ EDIT















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