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恋、コイ ~2page~

13s.jpg

 最近じゃ、前川さんも昼休みになると教室にはいなかった。
 たぶん5組のとこにでも行ってんだろう。

 いつの間にか、前川さんをつい目で追うようになった。
 体育の時間で男女別になったとき、遠くで50メートル走をしている前川さんを誰にも気づかれないようにこっそり見ていたんだ。
 
 「やった後悔より、やらなかった後悔のほうが大きい」って。
 ・・・たしかなんかのCMで言ってたな。
 ふと、その言葉を思い出した。

 俺は何もやらなかった。
 目で追っていただけで、ただ遠くからこっそり彼女を見ていただけで。
 彼女は俺の気持ちなんて知るはずもなくて。
 だけど、前川さんが付き合うようになったって聞いてひとりで悔しがってんだ。
 知って初めて、もっとしゃべりかけようとすれば良かったとか、言えばよかったとか後悔してる自分がいる。
 そんなこと考える意味なんてねえのに。

 予鈴が鳴って少しすると、教室のドアの前に前川さんが現れた。
 佐々木も一緒に来ていて、「じゃあね」って名残惜しそうに手を振っている。

 そんな光景をいちいち見つけてしまう自分に溜息をついて、さっきから何度も見ている単語帳のページに目を落とした。


 「お邪魔しまーす」
 「飲みもんとってくるから先部屋行ってて」
 野田は俺に鞄を投げてよこすとそのまま台所へと行ってしまった。
 久しぶりだが何度も来ている野田の家である。5段目がきしむ階段を上り2階に行くと、迷わず二つ目の部屋に入った。
 相変わらずなんというか・・・汚い部屋だ。遠慮なく床に置いてある雑誌や漫画本をどかして座る。
 夏休み直前のこの期間は期末テストで赤点をとった生徒への補修期間だ。赤点を免れた俺と野田は学校が休みになるわけだが、今年受験の高三が休んでもられない。
 けど、まぁ・・・。一日ぐらい遊んだっていいだろう。一日勉強してたぐらいで天才になるわけでもない。
 俺は野田が来る前に、ジャージとユニホームに埋もれた小さなテレビに電源をつけると、ゲーム機の電源をつけた。ロード中と出てからメニュー画面が立ち上がる。
 「お、もうつけてんの」
麦茶とガラスコップを両手に持ってきた野田が言った。
 「ってお前。このゲーム先週発売したばっかじゃなかった?なんでもうレベル48になってんだよ」
 「いやー、そこまでやり込んでる覚えはないんだけどさ」
 「しかもお前野球部だろ?野球部って夏がいちばん大変そうなのに練習とかねえのかよ?」
 「夏休み前に県大会の2試合目であっさり負けた。夏になる前に俺たちの夏は終わったってやつ」
麦茶をコップ一杯一気に飲み干すと野田は笑って、一緒になってコントローラーを持った。
 それからは無言で、ときどき笑ったり騒ぎながらゲームをやった。
 ダンジョンがひとつ終わって黒いテレビ画面にロード中と表示されてるとき、野田が不意に「そういえばさー」とだるそうに言い出した。
 「お前って吉崎と付き合ってたりすんの?」
 「・・・・・・・・・・・・・は!?」
自分でもどっから声が出たのかわからないぐらい素っ頓狂な声が出た。
 「なんだそれ!俺と吉崎が?そんな噂知らねーよつか付き合うとか考えたことねえ!」
 驚く俺に「あ・・・そうなん」とちょっと驚いた顔をしてから小さく言った。
 「噂とかじゃなくて、よく掃除の時間とか二人でしゃべってるのとか見かけたからそうなのかなって勝手に」
 「うーん、なんつーか・・・。吉崎とはそういう感じじゃねんだよ。ただの友達、みたいな」
 「へぇー・・・・、じゃあ吉崎のただの片思いか」
ぼそっと言った野田のその言葉に俺は声が出る代わりにコントローラーを落とした。野田は俺の顔を見てから明らかに「しまった」という顔をしてゆっくりテレビのほうに背けた。ロードは終わってゲームが再開されたがそれどころではない。
 「よ、吉崎が俺に・・・片思い!?なんで?」
 「なんでって。でも見てれば気づかない?あいつ超わかりやすいし」
 「気づかねえよ。知らねえよ。つうか見てればってお前こそ吉崎のこと見てんのかよ」
 「あー・・・・いや、俺ら従兄弟同士だからさ。まあ、だからって仲良いってわけじゃないけど。なんとなくっていうか・・・」
罰の悪そうな、歯切れの悪い言葉で答えた。
 しかし俺はその事実にもまた驚くばかりだった。


 一週間なんてあっという間だった。そして一学期が終わるのもあっという間だ。
 補修期間が終わると授業もなくすぐに夏休みに入る。今日も掃除して蒸せる体育館で終業式をやって帰るだけだった。
 かったるい担任の話を聞きながら・・・正確には全然耳に入ってこないんだけど、さっきから後ろが気になってしょうがない。意識しすぎだと自分でも嫌になるほど、吉崎の視線や行動に気になって。落ち着かなくてしょうがなかった。野田があんなこと言ったせいだ。
 本当に吉崎は俺のことを好きなのだろうか。そんなこと考えると自惚れているみたいで嫌だが、もし・・・もしそうなら、俺はあいつに前川さんのことをしゃべっていたわけで。吉崎は俺の好きな人を知っていて、知りながら相談にも乗ってくれていたってことだ。
 申し訳ないような小さな罪悪感と後悔する思いがモヤモヤと湧いてきた。今更になってしゃべらなければ良かったとさえ思った。
 俺は必死になって、背中から意識をはぎ取った。


 「よぉ」
ビクついた俺と自転車のブレーキ音がほぼ同時だった。
 「・・・なんでまだ吉崎もいるんだよ」
 こんなときに限ってなんで遭遇すっかな。
 部室に置きっぱなしだったテニスラケットを夏休み前に取りに行ったのだが、その間にほとんどの生徒が帰ったようだ。下校中の生徒は俺と吉崎だけ。
 「あたし部長だったから後輩に合宿のこといろいろ相談されてたんだよ」
 吉崎は自転車から降りて俺と歩調を合わせて歩き出した。
 「というかやけに迷惑そうにすんだね。声かけんじゃねえって感じだった?」
 「え・・・いや、そういうわけじゃねえけど」
 「わけじゃねえけど?」
吉崎はそのあとの言葉を促した。
 本人に聞くべきなのか?けどこのモヤモヤした気分で夏休みに入るのも嫌だった。もし気まずくなったって明日から当分会えなくわけだし、今しかないような気がした。
 「・・・おまえさあ」
半歩前を歩く相手に呟く。
 「なんつーか・・・えっと・・・お前好きな奴とかいんの?」
 自分でもびっくりするぐらいしどろもどろだ。
 吉崎は歩くのをやめて、ゆっくり振り返った。
 「どうしてそんなこと聞くの?」
 「いや・・・自惚れとか思われるとあれなんだけど・・・・・吉崎が俺のこと好きなんじゃないかって聞いたから・・・・」
 「は?誰に?」
その声を聞いて瞬時に言わなきゃ良かったって後悔したが、俺が答える前に「まあ、そんなことはどうでもいいか」と彼女は言った。
 「真田は・・・・もしも、あたしが真田のこと好きって言ったら困る?迷惑?」
 ふたりの間に沈黙が流れた。

 「ごめん」俺が口を開く前に吉崎が言った。
 「迷惑に決まってるよね。だって真田は前川さんのことが好きなんだもん」
 「・・・・迷惑なんて思わねーよ。思ってない。ただ・・・・・」
 言葉が出てこない。なんっつーんだろ。なんて言えばいいんだろう。
 「・・・・・ごめん、俺もよくわかんねえ」 
沈黙のあと、吉崎は小さく笑った。
 「そっか、そうだよね。実はあたしもよくわかんない」
 「え?」
吉崎は一度俺を真っ直ぐ見てから、地面に視線を落とした。
 「あたしは・・・・真田のことが好きだよ」
 息が詰まった。無意識に自分の手の平を爪が食い込むほど強く握りしめていた。
 そのあとに「でも・・・」と彼女の言葉は続く。
 「でももしそれで真田があたしのこと好きになったとしたら、それはそれで嬉しくない気がする。だって・・・真田は前川さんのこと好きだって知ってるから。わたしの気持ち知ったことでコロっと変わるような・・・真田はそんな軽い奴じゃないって。上手く言えないけど」
 俺は何も言えなかった。
 「けどさ、どっかでやっぱり期待しちゃう自分がいんの。だって真田、前川さんが佐々木君と付き合ったって聞いて落ち込んであっさり諦めてんだもん。前川さんにアタックするとかアピりもしないで。それ見てたらもしかしたら・・・・真田はそれほど前川さんのこと好きじゃないんじゃないかって」
 「それは・・・・!」
 「ごめん、これは勝手なあたしの願望ってやつ」
吉崎は俯いたままだった。
 「結局、あたしは片思いでも片思いじゃなくても嬉しくなれないんだよ」
なんか複雑っていうかすごいメンドーな感じだね、と吉崎はそう言って自転車を押し始めた。
 二人の間には二歩分の距離と沈黙は続いたまま─────

 それからいつものコンビニで吉崎は「じゃあ二学期に」と何事もなかったように明るく言って自転車に乗っていった。


 俺は最後までなんも言えなかった。

 ただ、吉崎の遠のいていく後姿を見ていた。


 続く

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| 恋、コイ | 01:24 | comments:4 | TOP↑

COMMENT

若かりし頃の・・・
初めまして^^
お邪魔します♪

何だか学生時代を思い出して・・・(涙)
とても切なくなるお話しですね
続き楽しみにしてます

| *am*blue | 2011/07/26 22:28 | URL | ≫ EDIT

>*am*blueさん
初めまして!
コメントありがとうございます><

わたしも中学と高校を思い出して書いてますw
(といってもこんな恋愛イベントなんて丸っきりなかったのですが!笑)
教室の雰囲気とか夏の暑いなか学校行ってたりだとか、恋に興味あるのに上手く出来ない幼さだったりとか。

そういうものが物語の中に含められればと思っています。
(だから恋愛小説を執筆ってなると学生恋愛ばっかりになってしまうんですね^^;


前作が梅雨の6月更新、
2pageが夏休み前のちょうど今頃、
と、更新時期と物語内の時期を連動させて書いています。

だから次回続きは8月になるかと・・・・!!


良かったらまた覗きにきてください♪

| 神楽崎@管理人 | 2011/07/27 03:01 | URL | ≫ EDIT

 吉崎さんが、とってもいい娘ですね^^
 恋愛に不慣れな真田も初々しいし。

 切なくて、それでいて先を期待できる素晴らしい作品だと思います。
 いい作品って先が気になるけど、永遠に読み続けたいっていうジレンマになりますよね^^
 まさにこの作品がそうです(#^.^#)

 また続きを読みに来ますね^^

| 月黎風 | 2011/07/29 07:56 | URL | ≫ EDIT

>月黎風さん
ありがとうございます!

今までの私の恋愛小説ってちょい甘で元々両想いの少年少女だったので
今回は「大人っぽい切ないものが書きたい!!」で始めたので
その切ない感じが通じて良かったです^^
大人っぽいかは果てしなく疑問ですがwww

>先が気になるけど、永遠に読み続けたい
すごく・・・すごくそう言っていただけて嬉しいです(´;ω;`)
ひとりでもそう思ってもらえる小説が書けてれば良いです><


たぶん次回がこの物語の最後になると思います^^
また覗きに来てください☆

| 神楽崎@管理人 | 2011/07/30 16:53 | URL | ≫ EDIT















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