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恋、コイ ~3page~

3page


 煌々と照りつける日差し、鳴り止まないセミの声、前の道路を走る車の音。
 そんな“夏”が窓ガラス1枚を隔てて、まるで別世界のように感じた。
 暑さとは無縁の冷え冷えとした塾教室では、目の前の黒板と白い文字たちが異様な存在感を放っている。
 白い壁に囲まれた教室は、まるで自分が白い箱の中に閉じ込められているように感じさせた。
 
 先生が腕時計をみたあたりで、講義は一時中断された。
 「あ、そうだ。明日ってここらへんで納涼祭やるだろ?お前行く?」
 隣の生徒の会話が耳に入った。
 そういえば明日お祭りか・・・。
 言われてみると、あちこちの街灯に提灯が並んでいたのを思い出した。
 この納涼祭は焼きそばや輪投げなどの模擬店が商店街に立ち並んで、地元ではけっこう大規模なお祭りになる。
 俺も毎年のように行っていた。たしか去年は野田と高山たちと行った気がする。
 
 今年も誰か誘って行ってくるか・・・。
 
 そう思ったとき、真っ先に頭に浮かんだのが吉崎の顔だった。


 ケータイを開いたり閉じたり。机に放りだしてみてはまた手に取って悩んだり。
 開いて出る画面は同じ、吉崎のケータイの番号だ。
 さっきから自分が無駄なことを何回も繰り返しているのはわかってる。
 でもなかなか電話をかける決心がつかない。
 今更なんて言えばいいんだ?
 なにもなかったように軽く「行こうぜ」って言えばいいのか。
 日頃どうやって吉崎に話しかけていたかわからない。
 むしろ、もう電話なんてかけなくていいかも・・・。
 「洋輔!いいかげん早くご飯食べに来なさい!」
 「わーーったって!!」
リビングで叫ぶ母親の声に同じ大きさの声で返事をした。
 それと同時に ピッ とボタンを押す音がする。
 手元を見るとケータイを持っていた自分の左手の親指が受話器を上げるボタンを押してしまっている。

 発信先は当然、吉崎実里だ。

 「え、うそ!?」
 ケータイの耳元からはプップップップと電波を繋げる音がしている。そのあとにコールが鳴り始めた。
 急いで切るか!?いやでも今切ったらワンギリでそれこそなんだろうと相手から電話がかかってくるはずだ。
 3回目のコール音が鳴る。
 俺は仕方なくケータイを耳に押し当てた。
 頼むから出ないでくれ!留守電につながってくれ・・・!

 ブツッ  受話器をとる音がした。
 
 マジかよ。
 「・・・はい」
 少し警戒している吉崎の声がした。
 「え、あ、あのっ!ええっと・・・俺、真田だけど」
 自分からかけた電話なのに笑えるぐらいどもってしまった。
 「そんなことケータイに表示されるからわかってるよ」
吉崎の笑う声が聞こえた。「んで、どーしたの?」と言った声がいつもと一緒でちょっとほっとする。
 「あのさ・・・明日調布市で納涼祭あんじゃん?吉崎、明日暇?」
 「明日?夕方に予備校終わるからそれからなら・・・空いてるけど」
暇なのかよ!
 自分から電話しておいて理不尽なことを思う。
 「俺もさー、友達誘ってみたらみんな駄目だって言われて。吉崎は暇かなと思って・・・」
 言いながら声がだんだん消えていく。友達を誘ってみたなんてもちろん嘘だ。
 しかしハキハキとした声で言ったのは吉崎のほうだった。
 「いいよ。あたしも最近お祭り行けてなかったし。真田も暇なら行こうよ」

 
 「明日調布のお祭り行くことになった」
 「あら、友達と?」
 「う~んと、まあそんなとこ。クラスの男子」
お母さんとそんな会話がされたのが真田から電話がかかってきた昨日の夜のこと。
 その日の夕方、予備校から家に帰ってくると部屋には浴衣が広げられていた。
 「ちょっとお母さん!あたし浴衣なんか着て行かないから!」
 「何言ってるの、お祭り行くんだったら浴衣ぐらい着ていきなさい。せっかく家に浴衣があるのに勿体ない」
 「勿体ないって・・・だって浴衣なんて着てたら気合い入れてきたみたいに思われるじゃん・・・」
 「あのね、女の子は可愛くしてってなんぼなの。この浴衣だって今の年頃のあんたにしか着れないんだから」
 「だからそれが嫌なんだって・・・」
 「好きな男の子と行くんでしょ?だったら浴衣着て可愛くしていきなさい」
言葉に詰まってしまった。そんなこと言ったはずないのに、このお母さんにはなんでもお見通しみたいだ。
 「ほら早く!」とせかされて、あたしはしぶしぶ着ていたTシャツを脱いだ。


 待ち合わせ時間ぴったりに着いた。真田はまだ来ていないみたいだ。
 額ににじみ出てくる汗をハンドタオルで拭いた。日は暮れかかっているけど暑さは全然引かなくて、慣れない浴衣の動きづらさでここまで来るのにすでに汗をかいてしまった。
 前髪を手ぐしで直す。
 言われるがままお母さんに浴衣を着せられ、それに合わせて髪の毛も結ってきた。日頃学校ではつけられない花のヘアピンをつけてみる。
 ・・・変ではないだろうか。
 歩いてきた疲れとともにそわそわして胸がドキドキしていた。
 いつも学校の制服か部活のジャージしか着ないもんだから、浴衣を着ているとすごく居心地が悪かった。それに学校以外で真田に会うなんて初めてだ。
 お祭りに誘われて浴衣まで着てきて、気合い入れてるとか似合わないと思われなきゃいいんだど・・・。
 それがなんだかすっごく気恥ずかしい。
 「よう」
ふいに声が聞こえて顔を上げると、真田が立っていた。
 黒のTシャツにジーパン姿で、シャツから伸びた腕にはTシャツの裾と段違いでテニスのユニフォームの日焼跡がくっきりとついている。それが格好悪くて面白かった。
 「最初吉崎ってわかんなかった」
そう言って真田は、気まずそうに首の後ろを掻いた。
 
 花火の打ち上げが7時半からあるということで、その会場までのびる商店街をゆっくり歩いて行く。
 両側には屋台が立ち並んでいて、焼きそばはもちろん、綿あめやリンゴ飴や金魚すくいなど目についたものをやっていく。
 金魚すくいで全然取れなくてすぐポイを破ってしまった真田に、あたしがすくった3匹の金魚の1匹を分けてあげた。
 はぐれそうになるとか手をつなぐ、なんてそんなイベントは起きるはずもなく。花火会場にあっさりと着いてしまった。

 土手にはもう何人もの人たちが敷物をひいて花火が打ちあがる時間を待っていた。
 「あそこに座ろうよ」
 土手の草原の中にあるコンクリートの階段をみつけて指差した。
 お互い座ったはいいものの、大した会話もなく。
 買ってきた焼きそばの1つを真田に渡して、あたしも焼きそばをほおばった。
 あたしと真田との間はきっちり拳に2個分の隙間が空いている。
 
 ドーーン
 一発目の花火が上がった。それと同時に土手にいるたくさんの人たちから歓声があがる。
 打ちあがる花火はけっこう近くて、真上を見るように打ちあがる花火を眺めた。
 「ねえ」
初めに口を開いたのは吉崎のほうだった。
 「なんで今日、お祭りに誘ってくれたの?」
 吉崎は花火を見上げたまま。俺はなんて言ったらいいかわかんなくて、だからそのまんま答えた。
 「お祭り行きてぇなって思った時に吉崎の顔が浮かんだから」
 「なんで?」
俺も上を見上げる。
 「・・・そんなもん知るかよ」
 「知るかよって・・・。そんなん・・・ひどいじゃん・・・・」
花火なんて見ていなかった。くぐもった声はどこか泣きそうに聞こえる。
 「あたしのこと好きでもなんでもないのに、お祭り行こうって。あたしは・・・真田のことす、好きだってちゃんと言った。それで誘うなんて、そんな期待持たせるようなことするなんて酷いと思わない!?こっちは諦めよう諦めよう思ってるのに、真田から言われて断れるわけないじゃんか!」
 真田は黙ったままだ。
 胸がドクドク脈打っている。まくしたてるようにワッと言いたいこと言っちゃったけど、その沈黙の間にも後悔の波が押し寄せてきた。
 真田の横顔に打ちあがる花火が光って映る。
 「俺さー・・・考えてみたんだけど」
真田がおもむろにしゃべり始めた。
 「お前が前に言ったこと、考えてみたんだ。俺は前田さんのこと好きなのかって。そしたら、よくわかんなくなってきた」
決して大きい声でしゃべってるわけじゃないのに、真田の声は花火の音よりもはっきり聞こえる。
 「たしかに前田さんが付き合ったって聞いてショックだったし『なんだよ』って思ったけど、でもそれもなんか、ただの憧れの一種だったのかもなって。」
 吉崎は何も言わずにいた。
 「けど今日祭りがやってるって聞いて行こうかって思った時に、真っ先に思いついたのが吉崎だったんだ。でもそれだって俺自身なんでかよくわかんねーし」

 自分が思ってることを口にするのに、こんなにも難しく思ったのは初めてかもしれない。
 いちばん上手く言い表せる言葉を見つけることができない。

 「なんっつうかー・・・俺もお前のこと嫌いじゃない。けどそれも友達としてなのかそうじゃないのか、俺自身がよくわかんねーんだよ」
ジャリっとサンダルの底が擦れる音がした。

 わかってる。知ってた。覚悟もしてた。
 けど押し込まれていく胸の重みはどうしようもできない。

 「・・・わかった」
声を絞り出してなんとかそう言った。
 「わかったって?何が?」
 何がって・・・!思わず叫びそうになって真田を見たら、彼は本気で聞いているようだ。
 そんな真田の顔を見たら、いつの間にか強張っていた肩の力も抜けてしまった。
 「だから要するに、あんたはあたしのこと友達とかそれぐらいしか思えないってことでしょ」
 「そーなんかな?」
 「そうなんだよ。というか真田って案外女々しい性格してんだね」
 「女々しいってなんだよ!おめぇがサバサバしすぎなんだよ。第一そっちから告ってきたくせに、なんで吉崎に俺の気持ちを決められるんだよ」
 「あんたがウダウダわけわかんないことゆってるからじゃんか」
 「ウダウダって・・・。俺はただ吉崎とは今の感じのままがいいし、卒業したって変わらずな感じでいたいんだよ」

 ・・・・卒業しても?

 「それは・・・・つまり・・・・高校卒業しても会ってくれるってこと?」
吉崎に言われて、自分の言ったことにはたと気が付いた。俺いま、すげえこと言った・・・?
 「まあ・・・そういうこと・・・かな」
 吉崎はなにか考えて・・・でもとたんにくすくすと笑い出した。
 「なに笑ってんだよ」
 「だって・・・!いいよ、あたしも高校卒業したからって真田とそれっきりなんてつまんないから」
 吉崎は笑ったままだ。それを見ていたら俺もつられて笑ってしまった。

 「あ、見て!すごーい!」
 
 頭上で連打花火が空いっぱいに広がる。
 

 ふたりの間は拳2個分の間が空いている。

 けれど、その距離間がふたりとも心地良く感じた。



 Fin.

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| 恋、コイ | 20:02 | comments:2 | TOP↑

COMMENT

うわー、やっと、やっと読めたー\(^o^)/♪
待っていましたよ!!
いやーキュンキュンしました。
ほんとゆうさんのお話は可愛くて愛おしいです。
ああ、私もこんな爽やかなお話が書きたい(無理)
不器用なふたりですが、ゆっくりと距離を縮めていってくれることでしょう(^ν^)☆パチパチパチパチ
で、出来れば「この月明かりの下で」の続きも、とかひとりごとを言ってみます(^^)
キツネさんがかっこいいですw

| 水聖 | 2011/10/04 23:40 | URL | ≫ EDIT

>水聖さん
早速のコメントありがとうございますうう!!
今回はセツナイ系を・・・が目標だったのに
結局ふたりの恋の行方を曖昧にしてしまいました。
(その後は読者のご想像にっていう手を使うw)

でもキュンキュンしていただけたならこの上なく嬉しいです!!
水聖さんの小説には足元にも及ばない拙い恋愛小説ですが・・・。
ドロっとしたのを書きたいと思ったのに
変わらずの爽やかな?感じに(ノ∀`)
(あれかな・・・恋のライバル的な存在がいないせいかな・・・)
今も学生恋愛の話から抜け出せないでいます。。。


今後は『この月明かり~』に時間かけたいです!
ありがとうございました^^

| 神楽崎@管理人 | 2011/10/07 00:55 | URL | ≫ EDIT















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